黒豚文庫

真夏日とプチ花見。

最近バイトがやたら早く終わります。菅沼です。

生活のために某工場で炭水化物をかきまぜる仕事をしているのですが、
ここのところ仕事が少なくてあっさり終わります。

今日も昼過ぎ、早い時間にバイトが終わってしまい、
弁当を片手に職場を出たのですが。

今日は、ほんのちょっとだけ、いつもと違う道がありました。

路上駐車の車列が崩れ、ちいさな入り口が開いています。
河川敷の隙間にかかった橋。いつもは車に遮られて見えないのですが、
今日に限っては車がおらず、それで気がついたというわけで。

何となく気が向いたので、ふらりとそちらへ。


たんぽぽの咲く緑の芝。
間を縫うように走る、割れかけたアスファルトの小道。
ひびの中にたくましく穿った蟻の巣と、行き交う蟲たち。
褪せたベンチと、雑草の生えた花壇。
色とりどりのチューリップ、ラベンダー、水仙にパンジー。

ちいさな花がたくさん咲いて、初夏の風に揺れている。

花々の中でも、特に目を楽しませてくれたのは、
小道の脇にひっそりと生えていた、一本の桜でした。

背丈はわたしの二倍ほど。
広がった枝いっぱいに花を咲かせ、空の青を背景に、
薄桃色の命を輝かせている。


――あ、この為に来たんだな。


ほとんど直観のように、そう思って。
迷わず荷物を降ろし、幹に背中を預けて、水筒を取り出す。

中に詰まったお茶をフタに注ぎ、空を見上げて。
真っ青な空に映えた、桜を眺めて。

ちいさな花見をした。

温かい風が吹き、強めの陽射しが顔にひりつく。
近くの巣から現れたのか、黒蟻が時折ズボンを登ってゆく。
それらを眺めながら、茶を一杯。

湯気を立て、掌を温める椀を、くいっと一杯。

ふと、同じ年頃の男で、こんな年寄りみたいな真似をしてる奴はおらんな、と思う。

我ながら暇人もいいところだ。
皆忙しく働いている昼下がりに、こんなことを。

空に高く輝く陽。
傾くときまで、そこにいるわけにはいかないけれど。

でも、何だか、とても心地良くて。

桜に向かって、呟いた。


大丈夫だよ。
少し疲れてしまったけれども。

ちゃんと、立って歩くから。


でも、今だけは。

この一杯を干すまでは、ここにいられますように。

陽だまりの中で、茶を一杯。
飲み干しながら、ほんのわずかな花見。

一人で飲んだ茶が、旨かった。


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by suganumas | 2007-05-22 20:04 | 日々の雑記

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