黒豚文庫

コラボ企画!

夏も終わりの今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
菅沼さんは微妙です。忙しいのか忙しくないのか。

思えば一月に文庫発売以来記事書いてませんが、いちおう生きています。
死亡説すら流れたアカオニ・トムのごとくなんとかギリギリラインで生存中です。
というわけで拙著『ストップ☆まりかちゃん!』イラストの夜野さんと、
簡単ながらコラボ企画、まりかちゃんPSP壁紙と、SSなど掲載してみます。

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ストップ☆まりかちゃん!外伝
『黒歴史とSaGaとなつやすみ。』

 夏休み、ひりつく日差しが今日の暑さを予感させる午前中。
 朝ごはんを食べ終えて、夕べの残り湯を使って洗濯機を動かし、
 居間をはじめとする共用部分の掃除機をかけた、その時だ。

「ちょっと、空いちゃったな……っ、と」

 ぼくはソファに腰を下ろすと、ふう、と低めの息を吐く。
 夏休みに入ってからというもの、どうにも手持ち無沙汰な日が続いていた。
 家事はすぐ片付くし、最初は極楽気分だった午前中のお昼寝も、何だかどんどんダメ人間になっていく気がして痛い。となると、長い一日をどうやって過ごすかが、問題で――

「……ちょっと、だけっ」

 テーブルに置いてあったシャンパンゴールドのPSPを取る。
 この小さな端末で、ゲームのみならず音楽再生、動画の再生、設定次第ではインターネットまでやれてしまう。機械が苦手なぼくはゲーム専門だけど、買ってよかった。

「高かったもんなあ……」

 しみじみ思う。昔ハマったアクションゲームの続編がこれで出ると聞いて、欲しい本も我慢し、帰り道での買い食いも自重して、お小遣いを貯めたのだ。
 その甲斐あってゲームはすごく面白いのだけど、ハマッてしまうと時間があっというまに過ぎていくのが珠に瑕。
 響き始めたファンファーレにわくわくを隠し切れず、スタートボタンを押す。ぼくの分身、可愛らしい小柄な女の子がにこりと微笑み、物々しい武装を揺らして村に現れた。

「さてっ、今日もひと狩り……!」
「なにしてんの、星ちゃん?」
「うひゃっ!?」

 突然耳の真横に気配が現れ、思わず飛び上がりそうになった。

「あー、また真昼間からエッチなゲームやってるんだ? ダメだよ星ちゃん、いくら現代科学が進歩したからって、まだ液晶画面にダイブできるほどじゃないんだから」
「えっ……エッチじゃないよっ、健全かつちょっぴりバイオレンスな、ふつうの……!」
「ほへーん」

 まるで信じてない顔で鞠歌が言った。
 この腐れ縁の天才科学者にして同居人、放浪中の父親を除けば唯一の家族である彼女は、ヒマをもてあました猫のように顔を画面に近づけていく。
 すぐ真横をすり抜けて、鞠歌のうなじが息のかかる場所に現れた。短くてふわふわした産毛が頬をくすぐり、もさっとした大量の髪が顔にのしかかってきてものすごく暑い。

「ぷわっ! 鞠歌、見えないよ……って言うか暑いからくっつかないでってば!」
「根性ないなあ。かの有名な『心頭滅却すれば火もまた涼し』って格言を思い出して、愛の力でコラえなさい。ママへの愛と勇気と欲情をパワーに代えていいんだから!」
「何か混ざっちゃ危険なものが混じってないかな、それ……って言うかその格言の人、結局火攻めで焼き殺されちゃってなかったっけ……」
「いいのよ、そんな細かいことはどうだって。で、コレなんだけど」
「え?」

 ぼくのPSPを指差し、鞠歌はきょとんと小首を傾げていた。
 その好奇心溢れる表情に、ふとした不安が過ぎってくる。

「……鞠歌、コレ、知らないの?」

 いやな予感に突き動かされ、ちらっとPSPを掲げて見せると、不満げに唇が尖る。

「なに言ってるのよ。いくらわたしだって知ってるよ」
「そ、そうだよ……ね?」

 鞠歌は正真正銘の天才だ。そのせいか、若干興味の対象が偏っている。
 でも、さすがに心配しすぎだったかな。そう思ったときだった。

「スーパーゲームボーイでしょ?」
「それはスーパーファミコンに挿して使う奴だよ!?」
「え? でも……ゲームボーイブロスの金色って、あったっけ……!?」
「せめてゲームボーイカラーくらい言おう……! アドバンスなんて言わないから……!」

 だいたい何さ、そのゲームボーイへのこだわりは。まさか、携帯ゲームは全部ゲームボーイだと思ってるんじゃ……ありえないとは言い切れないのが、ちょっと怖い。

「ちゃんと他にも知ってるもん。……PCエンジンGTとか」
「いや、それ、九十年代から進んでないから……誰も知らないよ、そんなの……」
「何よう。『カトちゃんケンちゃん』から『ドラゴンスピリット』まで遊べる携帯ゲームなんて他に無いのに。テレビだって見られるし、って大竹まことも言ってるよ!」

 あたまいたい。と言うか今時の女子高生としてその認識はマズくないだろうか。学校教育にニンテンドーDSが採用されるこの新世紀に、いまだコア構想の支持者がいるとは。

「だいたい鞠歌、赤ちゃんどころか生まれてないじゃないか。何で知ってるのさ」
「勇作さんが遺してくれたの」
「………やっぱり、元凶はアレか」

 思わず頭を抱えるぼくだった。毎度のことながら、あのスナフキン男の遺産はロクなことをしない。父さんに憧れるあまり脳内が昭和で止まっちゃった女の子の心配なんて、我が父親は絶対してないはずだから、替わってぼくが何とかしなくちゃ……。

「……もしかして他にもあるんじゃないよね、鞠歌」
「テラドライブとか、ピピンとか、プレイディアとかなら物置に置いてあったけど」
「ゲーム黒歴史秘宝館でも作るつもりだったのかな………もしかして」
「保存用もふくめて三台ずつ」
「……父さん……っ!」

 実の父親について、またひとつ知らなくていいことを知ってしまった。
 どうせ隠すならさ、もっとこうファンタジックで、話の幅が広がりそうなものを置いてけばいいのに。巨大ロボを動かせるリモコン腕時計とか、女の子が飛び出してくる謎の物体とか。闇に埋もれたゲームハードを残されたって、対処に困るだけじゃないか……!

「闇のゲームと思えばカッコいいじゃない。首からかけたらゲーム王になれそうだし」
「……ぼくを一体何者にしたいのさ、鞠歌。……それより、やってみる?」

 いちどタイトル画面に戻る。中央の液晶画面で壮麗なデモムービーが始まった携帯機を差し出すと、鞠歌はん、と軽く首を振り、ポケットの中に手を入れて。

「コレ、覚えてる?」

 手垢で黄ばんだプラスチックの外装。灰色がかった、ちょっとした辞典なみのブ厚さと、手にずっしりくる機械の重みは、ぼくにも覚えのあるものだった。

「わぁ……ちょっ、懐かしいな、これって昔、ぼくが使ってた奴?」
「うん。勇作さんから、星ちゃんが貰ったのだよ」

 ゲームボーイ。もちろん初期型。
 乾電池を詰め込んで動かす超初期型のゲーム機は、確かにぼくが子供の頃に遊んだものだ。学校の友達が遊んでいるゲームをやってみたくて、父さんに譲ってもらったけど……皆、新しいのをやっていて、結局話に入れなかったっけ。

「ポケモンの赤とかやったよ、コレで! よく見つけたね、鞠歌」
「わたし、持ってたんだよ? 星ちゃんが飽きちゃってから、ずっと」
「ずっと………?」

 これでぼくが遊んでいたのは、たぶん小学校の頃だ。五、六年は昔だと思う。ぼくらの人生の三分の一にも等しい、長い長い時間を、ずっと持ってたのか。
 鞠歌がスイッチを入れる。カチッ、と音を立てて白黒の液晶に画像が映る。

 魔界塔士
  Sa・Ga
  
 はじめから
 つづき

「………うわぁ」

 あまりにも懐かしい画面に、ぼくは言葉を失った。
 鞠歌がソファを飛び越し、隣に腰を下ろしてくる。
 ぴたりと横にくっついて、

「あのひとが伝えようとしてくれたものが、この中にあるから」

 囁いてきたとき、何かわかった気がした。
 だから、鞠歌はこれを捨てなかったのだろう。
 これにこめられた気持ちを、隠された何か、子供の頃に感じたわくわくと、どきどきと、幼く純粋な気持ちのすべてを忘れないように。
 ずしりと重いゲーム機を手にする。
 ぼくの手から離れたPSPを鞠歌が受け取り、もの珍しげにいじり始めるのを横目に見ながら、指先のカーソルを『はじめから』に合わせて選ぶ。

 ひらがなで語られるストーリー。
 ピコピコしたステレオ音声。
 白と黒のドット絵。

 懐かしさに包まれて始まったぼくらの休日は、とても楽しく過ぎていった。

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※画像はPSPの壁紙サイズになっていますので、パソコンに保存→
 PSPのメモリに入れてお使いください。
※無断加工、二次配布はおやめください。

→ 可愛らしいイラスト満載の夜野さんのHP 『Piece Of Love*』 
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by suganumas | 2008-08-30 20:58 | 同人関係

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